DICE
Dice1
会社の同僚とくれば、俺の表面だけでイメージづけているらしい。
他人の評価ほど、当てにならないものはない。
「日向、今晩、一杯やろうか。平塚の野郎が無理な経営方針とやらを打ち出してくれたおかげで、このザマさ。飲まずにいられますかってもんだ。」
「あー、残念だが、森本、遠慮しとくよ。この書類、明日の朝までに上げとかないとね。」
「なんだ、なんだ、まだ仕事の話かよ。もうとっくに、退社のお時間だぞ。」
「あー。残業だよ。仕方ないさ。」
「まあ、いいさ、いいさ、どうせお前は仕事に生きる男。息抜きが必要な俺とは、身分が違いますか。」
ー森本が、バーで泥酔している頃、俺は黙々と、ワープロのモニターと、その一夜を過ごした。
Dice2
転がるサイコロ、不思議と出目は「1」ばかりじゃないか。何か細工でもしてあるのか?
退屈なリズム、何の変哲もなく毎日が過ぎて行く。刺激剤か何かないか。
Dice3
「まあ、まあ、日向君、遠慮しないで飲みたまえよ。名目は、北沢製薬の謝恩会だがね。業績アップに、君は多大に貢献してくれたからね。君みたいな部下をもって私も鼻高々だな。はっはっはっ。」
「どうも、ありがとうございます。」
うまくもないビールがのどを過ぎていく。酒はどうも苦手で、一口でもう酔いがまわってくるー。
「ー日向さん、どうぞー」
「まあ、まあ、一杯どうぞ。」
「ー日向さんて、強いのねー」
知らず知らずのうちに、どれ程アルコールを飲んだだろうか。
「ー日向さん、ーはじめましてー弥生と申しますー」
ふと、目を覚ますと、ダブルのベッドの横には総務課の関口弥生の裸体、社内では 有数の美女、まあ、才色兼美といったところか。中々いい眺めだと悠長なことを考えている時じゃない。何せ、夕べの記憶が全くない。
「うーん。」
弥生は気だるい声を上げて。つぶやきだす。
「日向さん、あなったって、うわさ通りですね。」
「何が、どうしたんだ。」
「何だか、コンピューターっていうか、ロボットみたいだったわよ。それも単純な。期待外れだわ。そんなんじゃ誰も感じはしないわよ」
Dice4
「日向、近ごろ疲れきってるな。夜の営みが盛んなんだろう。」
「ああ、少し疲れてるようだ。」
「もしかして、関口か。まあ、そんなわけないか。」
ー最近よく夢にうなされる。ある時は、焼肉屋の主人、厚手の肉を自慢げに、その腕前を客に披露する。
今度は、風変わりなカルトショップのおやじで、鮮やかな光を放つ鋭利なナイフ、そして、さまざまにカッティングされたアメジスト、ダイヤ、クリスタルといった宝石達が店頭に並んでいる。
お次ぎは、ブティックのショーケースが見える。おっ車が止ったようだ。作業服の男がダンボールを台車で運んでいる。あーっ。マネキンか、なるほど。
ラストは、どこを切っても同じ顔がでてくるロールケーキ。丁度、子供の頃以来見 ていない金太郎あめのような。そして決まって夢の終わりに弥生が浮かんでくる。冷たい微笑みがこちらに向かってくる。
ー最近、よく夢にうなされる。
Dice5
「お時間6時を回りました。SNFニュースステーションです。春の日差しも心地いいですね。もうそろそろ桜も全国的に開花宣言がだされて、花見で二日酔いの方も多いかと思いますが。では、今日始めのニュースです。昨夜12時37分、東京湾でさまざまな形に切断されたバラバラ死体が発見されました。被害者は大手製薬会社勤務のー。」
Dice6 or X
「日向課長、新薬品の書類です。早急に目を通して頂きたいのですが・・・」
「ああ、わかった。すぐにチェックする。」
「日向課長、昨日の件、どうもすみませんでした。うちのアポイント・ミスです。」
「森本君。君は一体何をやっているんだね。えー。一体、この会社に何年いるのかね。」
ー他人の評価ほど当てにならないものはない。こいつらは俺のどこを見ているのやら。何を知っているのやら。
ー何、君の持ってるサイコロも出る目が「1」ばかりなのかい?でも「1」の下の数は・・・