MOVIE'S ISLAND 03

マルコムX
「イエス・キリストは黒人である」・・・日本人の中でこの説を肯定するものは、恐らく皆無であろう。私もそうだったし、今これを読んでいるあなたもそうであるはずだ。だが、マルコムならこう言うかもしれない「果たしてあなたはキリストに会ったことが?会って肌の色を確かめたことが?」
 ・・・キリストがサンタクロースのような存在であったのならば、そういうことを言うのは夢のない奴、とか現実主義者という言葉で片付けられるかもしれない。
 しかし、キリストの存在はおよそ、そういった言葉では片付けられない。その存在によって理由なき迫害を強いられる者も多々存在するのだから。
 マルコムX・・・彼の存在を知らなかった者、名前ぐらいしか知らない者、曖昧にさわりだけ知っている者はこの映画を観なければならない。この映画を観ることによってアフリカの大統領に黒人が選ばれたことが、いかに歴史的なことであるか、また、その選挙に2キロも3キロもならんだ黒人たちの思いはどこから来ているのかが容易に想像できるであろう。
 冒頭にキリストの事を書いたが、この映画の中で、こういう台詞がある。「いかに頭が良くても、黒人は弁護士にはなれない。君は手先が器用だから大工になりたまえ。あのイエス・キリストも大工だったのだよ。」
 ・・・とても映画の中だけの台詞とは思えないものである。この歌い文句のために、その能力をいかんなく発揮できずに消えていった黒人が、一体どれだけいたのだろう。そして、その黒人達が果たして「イエス・キリスト」を心から信じることが出来えたのであろうか?
 どうしようもない街のチンピラだったマルコムが、牢屋にブチ込まれたとき、彼を救う男が現われる。その男はこう言う。「俺は低俗な言葉を使わない。それは言葉を知らぬものが使う言葉だ。」
 この台詞がマルコムをどう変えたのか?
 マルコムの師がコップの水にインクを混ぜてマルコムに差し出す。「砂漠で水に飢えたものならば、この水でも喜んで飲むだろう、しかし・・・」 そう言って、普通の水を差し出し「この水を一緒に差し出せば、必ずこちらを選ぶ」
 もうお分かりだろう。 アパルトヘイトという砂漠に乾いた黒人達が求めたマルコムという聖水・・・。
 しかし、いつの世にも「出る杭は打たれる」のである。マルコムに待ち受ていた最後の真実はあまりに冷酷で現実的なものだった。

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