short story 02
Working man ーこの街のどこかで

 坂崎志郎、アルマーニのスーツが似合うマッチョな彼のフェイバリットな物は、肉汁のしたたるサーロインステーキ。
 ブラックペッパーと、うんとガーリックのきいたやつね。
 そして、肉に相性のいい小粋なロゼのワイン(銘柄は詳しく知らないらしい)。
「ふっふっふっふっふーん、んーと何にしようかなと。」
 明日は、志郎ちゃんの彼女のバースデー、プレゼント選びに懸命、思案投げ首である。
 彼に彼女なんていたのかよ、おい。
 なんてお思いの方も多いだろう。
 何せ行きつけのバーで知り合い、つき合い始めて一週間。
 で彼女のお誕生日とは実に皮肉である。
 はたまた志郎にとっては至福の喜びだろうか?
「何か、インパクトのある物が欲しいんだな。んっこの時計いいなー。これからふたり愛を約束して、互いの時を刻もうよ。なんてね。おっアクアマリンの指輪か、でも、彼女の瑠璃色に輝く瞳にはかなわないなー。」
 ブティック、時計店、宝石店、化粧品店と足を運んではみたが、彼としては何かギャップがあり、イメージとは程遠く。
 志郎、再び頭に唾をつけ、坐禅をくみ、瞑想にふける。(ポン!ポン!ポン!)
「んー、形として残るものより、形として残るものより・・・。(チーン!)そうだ!心に残るものを贈っちゃえば、ハートに響くってやつですか。それも、あっと驚くやつ。・・・何か、俺じきじきにプレゼントを届けるのも、こっぱずかしいな。サンタさんにお願いするのも時期はずれか。なーんだデリバリーしてもらおっーと。」
 ーなかなかシャイなお人である。
 〜その日の夜、志郎の彼女宅〜
 “ピンポーン”
「こんばんわ〜、フローラルさえきです。お花を届けにまいりました。」
「まあ、志郎さんからだわ。なんて素敵なんでしょう。とっても嬉しいわ。」
 ーロマンチスト志郎は、彼女に赤いバラの花を100本送ったとさ、ちゃん、ちゃん。めでたし、めでたし。
 その後。
 “ピンポーン”
「毎度ありぃ〜、江戸長寿司で〜す。特選にぎり、10人前で〜す。」
「ちわ〜す。お待たせしませんが売りのよしの亭です。極上ロースカツ重、10皿お届けに上がりました。」
「ニイーハオ、長安らうめんあるねー。おいしい、おいしい、湯麺10丁持ってきたよ。」
 と、いかがわしいインド人のカレー、ターバンに身を包んだ妖しい男が運んできたエスニック料理、などなど永遠と夜更けまで続く。
 心に残る、ハートに響くより、なんか胸やけしそうである。
 ーその頃、志郎は残業を終え、彼女の家へと愛車スパイダーを走らせていた。

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