懐古【Nostosalgos】

人々には共通の故郷がある

暖かな一陣の香る風
木洩れ日に目映い青草
枯葉舞う並木
肌を切る白さに降る朝日

そして夕暮れに影だけを映す木立

ゆっくりと通り過ぎる自転車
空に浮かぶ雲
夕暮れに輝く星
青い暗闇に時を刻む時計の針

寂しく揺れるブランコ
独り取り残されたサッカーボール
誰もいない教室
遠くから響くチャイムの音

限られた音だけが響き
喧騒から守られた世界

不思議に人々の声は届かず
自分自身の呟きもない

ふと立ち止まり振り返れば
そっと目を閉じ顔を上げれば
そこに広がる懐かしい世界

手を伸ばすには遠すぎる
忘れてしまうには悲しすぎる

人々の心に沈む故郷
喪失感と思い出に沈む懐古という名の故郷

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