・・・流れた血の跡が何かの証なら何色?

・・・流れた涙の跡が何かを印すなら何色?

・・・では、とめどない血と涙は何のために?

あてのない旅立ち、やり切れない日常から、まだ、形の定まらない確固たる自分を、築くために、荒波の大海にもまれて、瓦礫と化した大地を歩き 続けた。
こぼれ堕ちた陽の破片と冷たく傾いた月の中で。
やがて、己の卑小さを痛く感じ、独りで生きてきたという自負が、打ちのめされた時、辿り着いた、たったひとつの簡素なモニュメント。
ここに、刻印された名の群れに、父の名前があった。
顔さえも、はっきり覚えていない彼の足跡が。
母が唯一、愛したここに眠る彼。
その存在さえも、消えかけたこの地と脳裏に実像が、虚像から一挙に浮かび上がる。
遥かなる放浪の末、乾いた渇望の末、ここで、やっと見つけ、やっと理解をした。
この流れる血潮は、父の大海から。
このとめどない感涙は、母の大地から、受けたものだと。

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