1995年5月11日
相変わらずの豪雨は街を気怠さと嫌悪感で埋め尽くす。 俺は、コートのポケットから最後の一本となったラッキーを取り出し、火を付けた。 欲望と怠惰が渦巻くこの街に、又一人の女が喰われていった。 その亡骸を半ば無関心に観ていた俺は、背後に流れる流麗な雨音にある種の旋律を覚えた。 それは死者への鎮魂歌と、これから起こりうる何かの前奏曲が混合した殺意の交響曲だった。